渡るカラス:壁打ち虚無日記

現代には珍しい?ネット初心者。忘れっぽい自分こそ、日記を書くべきであると思うので始めました。読んでもらったとしてもただ時間が潰れるだけのブログだと思われます。勘弁してください。

渡るカラスなどとのたまっていますが、どちらかというと引きこもっているタイプです。 忘れっぽいというのは本当で、日々消えていく自分自身を現世につなぎ留めておくために日記書いてます。時の流れは恐ろしいもので、気が付いた時には自分の意識だけが時の流れに取り残されていく。いつまでも自分の頭の中に現在の自分を住まわせて置き続けられるほど優秀な脳みそではないので外部に自分を移植しておくことにしました。 ただ日記書くだけでは確実に三日坊主になるので、少しでも他人の目を感じられるネット上で日記を書き始めました。 私はネットも文章も初心者なので、読者が得るものは何もないとは思いますが、パノプティコンの監視員としてご協力願います。(どちらかというとシノプティコンでしょうか?) 

雨の日にはポリマーよりポエマーがいい

5月1日

 本日は午後番の為、昼頃家を出る。

 玄関の戸を開けると随分とひんやりした空気が室内に流れ込んできて、足元を這う冷たい空気の見えない流れをついつい目で追ってしまう。

 外は雨降りのようで、働きたくない気持ちに拍車をかけた。というよりは、働きたくない気持ちの支配を受けてしまっている感じがした。

 働きたくないのはいつものことだが、普段なら出かけたい気持ちと合わさって難なく家を出ることが出来る。ただ、雨が降ったり暑かったりすると出かけたい気持ちは失せて、残るのは働きたくない気持ちだけになってしまう。

 雨は世界を変えてしまう。

 目の前に広がる光景の解像度は普段よりも低いにもかかわらず、普段は見えていない遠くの信号機がやたらはっきりと見える。BGMは鳥たちの鳴き声からモザイクのように無秩序な雨音に変わる。肌に張り付く空気は重く粘り強い感じがして、一歩ごとに体を後ろに引かれるようだ。

 雨によって大きく変わった世界を見ていると、僕だけがここに取り残されているような気がした。

 一度戸を閉じて、気持ちを落ち着かせるべく歯磨きをした。

 歯磨きによってもたらされる振動が世界と自分とを切り離すのにちょうどよいノイズを生み出して、僕の身体を通じて耳に届く。

 少しだけ落ち着いた僕が再び意識を外へ向けてみると、また少しだけ世界が変わったように思えた。

 冷たい夜の攻撃的で直線的な光と比べて、雨により和らいだ光は優しく僕を包んでいるように感じる。

 数件挟んだ先にある工事現場からの騒音、不規則な雨音、郵便を運ぶバイクの音とが混ざり合って、不思議と安心感のある雑音が生み出されている。

 その安心感を頼りにして、今日も家を出る。

 

 家を出て共用通路の出口へ到達し、いざ雨海へ繰り出さんと決意を固めた時に自分の手に傘が握られていないことに気が付く。

 玄関まで戻ってみたが傘がどこにもない。そういえば数日前の暑い日、職場に傘を忘れていたなぁと思い出す。

 仕方がないので合羽を着て出かけた。合羽を着ると暑いので、下は半袖に着替えた。

 上着は持たなかった。

 

 休憩中に近場のコンビニへ買い物に行こうと建物から外へ出た瞬間に肌寒い空気に包まれた。

 周りの人を見まわしてみると、半袖なのは僕だけだった。しかも足元はサンダルだった。

 暑い日に厚手の長袖を着て汗だくになり、今日のような寒い日に半袖をきて鳥肌を立てる僕はなんてアンバランスな人間なんだろう。おそらく周りの人々の中には半袖の僕をみて「寒くないのかなぁ?」と考える人間もいることだろう。

 そしてもちろん僕は寒さを感じているのだ。「心を読まれた」というと少々大げさだが、なんとなく自分の内面を、他人に対して隠している部分を視られているようでどうも落ち着かない。

 さらに悪いことに、暑い日に長袖を着る人間はそれなりにいるても、寒い日に半袖で出歩く人間はそうそういるものではない。とすると寒い日にわざわざ半袖で出かけるのは、なんか自分の基礎代謝を自慢しているみたいで嫌だな。

 そう思うと何とも恥ずかしい気持ちになってしまい、コンビニへ行くのはあきらめて建物内へ引き返した。

 おなかすいたなぁ。

 

 結局寒さには耐えられず、帰りも合羽を羽織って帰ることになった。自転車でもないのに合羽を着ているというのは少し怪しく見えるかもしれないが、巷はゴールデンウィークなので何とか許されるかもしれない。そう信じてコソコソと、大通りを避けて細い道を歩く。

 家に帰って合羽を畳んで夕飯を食べた。

 傘を職場に忘れたことに気が付いた。

 

corvusocrax