6月8日
深夜。
やはり眠れなくて何気なくテレビをつけたら「運転席からの風景」がNHKで放送されていた。今日の路線は都会の秘境駅「海芝浦駅」を有する首都圏のローカル線、鶴見線だ。
僕は昔川崎に住んでいたが、正直鶴見線には一度も乗ったことがない。ほぼ全線が工業地帯を通過することもあって用事が無い上に、路線そのものへのアクセスが悪いのである。他路線から乗り換えようとすれば、JRもしくは京急の鶴見駅かJR南武線支線の浜川崎駅のいづれかになるわけだが、そのどちらもそうそう行く場所ではない。
仕事か、はたまたよほどの目的意識と行動力が無ければまず一生乗ることが無いと言えるであろう路線なのである。
そういえば、4月にも同じような経緯でこの番組を見たことがあり、その時は武蔵野線だったなぁなんて思い出す。武蔵野線も半分貨物線みたいな感じだが、東京の外側を大きく環状に囲い、放射状に延びる首都圏のJR私鉄各線と接続することもあって利用客も多い。僕も結構高頻度で利用している。
そんな事を考えていたら、3時45分頃から今度は武蔵野線の風景が放送された。ひょっとしてこれ再放送?
この番組、うるさくなくていいな。
ちょっとしたBGMと環境音でだけで構成されているから変に耳が傾くようなことがない。NHKだからCMも無い。
電車がダイヤに沿って粛々と運行されるように、番組も淡々と進行していく。ヤマとかは特になくて、この番組を見ていると川のようにただただ時間が流れるような感覚になる。
「こうゆうのでいいんだよ。」
一言で言えばこうなる。
そもそも僕にとって電車は乗り物の中でもかなり無機質に感じているところがあって、例えば車や飛行機と比べてはるかに擬人化(義生物化)しずらく感じる。車とかバイクとかに比べて意思を感じない(そもそも意思は無いのだが)というか、完全に移動するための「仕組み」であるように思えるのである。
だが、あくまで擬人化”しずらい”のであって多少生物っぽくも見えてしまうわけで、そこに不気味の谷的な何かがあるのかもしれないし、トーマスがちょっと怖く見えるのもこれが原因なのかもしれない。
ただこの不気味さがまたよくて、よくわからない存在に人間が輸送されている感じが何とも言えない動きを心に与えてくれる。
「なんかいいなぁ。」
夜中にこう思えることはかなり幸せかもしれない。
いよいよ眠気が回復してきたのでそろそろ寝ようか。
corvusocorax